日本郵政、豪物流を6000億円で買収 上場へ成長戦略
日本郵政グループはオーストラリアの物流大手、トール・ホールディングスを買収する方向で最終調整に入った。買収金額は6000億円規模とみられる。海外の物流企業を直接傘下に収め、今秋を目指す株式上場への成長戦略と位置づける。郵政グループの企業買収案件として過去最大となるだけでなく、アジア太平洋地域の経済成長を取り込むグローバル企業として国際競争に臨む転機となる。上場を控えた郵政民営化は新たな局面に入る。
トール社は豪州に本社を置く物流大手で、オーストラリア証券取引所に上場している。創業は1888年で、アジア、欧州、北米などを中心に世界55カ国・地域に1200以上の拠点網を持つ。特にアジア地域での企業間物流業務に強く、日本でも営業している。年間売上高は約8000億円(2014年6月期)。
6000億円とも見込まれる買収規模は14年であればサントリーホールディングスによる米ビーム買収に次ぎ、第一生命保険による米中堅生保買収にほぼ匹敵する。
日本郵政はトール社を傘下に収め、出遅れていた海外物流事業に本格参入する。郵政グループで物流業務を担う日本郵便の海外拠点は中国・上海のみだ。昨秋には欧州物流大手との提携を通じて国際宅配便に参入したが、物流網自体はあくまで他社のものを利用してきた。
世界規模で事業展開するトール社の買収を機に、国内市場中心だった郵政グループは大きな転換期を迎える。今後は米物流大手のUPSやフェデックスなど国際的な大企業との競争に入る。
日本郵政は傘下の金融2社(ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)と15年秋にも同時上場する方針を公表している。法律で株式の処分が義務付けられているのは日本郵政と金融2社だけで、郵便・物流事業を担う日本郵便は郵政傘下に残り続ける。
日本郵便の業績は日本郵政の株式の値付けに直接響く。だが、同社の業績は人手不足によるコスト増に加え、ヤマト運輸や佐川急便との競争激化で厳しい。郵便物の減少にも歯止めがかからず、今期の予想最終損益は260億円の赤字を見込んでいる。
国内物流市場はインターネット通販の拡大などで成長しているが、中長期的には人口減少の影響で頭打ちになる公算が大きい。日本郵政は旧日本郵政公社時代の05年にオランダ物流大手のTNTと業務提携を発表。海外物流に本格的に進出しようとしたが、事業計画のずれから白紙に戻った。
海外物流への本格進出は日本郵政グループの成長戦略にとって避けられないが、一から自前で拠点網を整備するには時間がかかる。世界中に拠点網を持つトール社の買収は、日本郵政グループの成長の土台づくりとして欠かせない選択だった。
日本郵政は昨年、傘下のゆうちょ銀行の余剰資本から1兆3千億円を吸い上げた。トール社の買収にはこの資金を投じる見通しだ。(日本経済新聞)
上場に向けて攻めてきていますね。
初値売却での大きな利益は予想しにくいですが、無事に上場成功させてほしいですね。
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